同胞

虫と言ったらとにかくめっぽう苦手だった。
触るなんてもってのほか、
見るだけで悲鳴をあげていた。
あのヒステリックな反応は
我ながら呆れるほどでも
制御不能だった。
と思っていた、つい最近までは。
生物学を専攻するほどだから
当然ながら生物に興味をもつ次男が
動物やら植物やら、そして虫についても
ああだこうだと蘊蓄を傾けるものだから
コワイ虫がいつの間にか
生きとし生ける同胞として
映るようになったのだ。
まだ触れないけれど。
そうか、驚くほど短い一生を
虫だって懸命に生きているのだ。
そうか、あんなにちっちゃいけれど
生態系を支えるおっきな要員なのだ。
あのヒステリック反応も
この同胞意識も
つまりはこちらの受け取り方次第なのだ。
自分の『意識』で世界は変わるのだ。
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<往来の難しい時節ではありますが、
欧州生活を希望される方やご興味のある方、
訪ねていらっしゃる方、在欧30年になる私で
お役に立てることがあれば、お知らせください>