同胞

虫と言ったらとにかくめっぽう苦手だった。

 

触るなんてもってのほか、

見るだけで悲鳴をあげていた。

 

あのヒステリックな反応は

我ながら呆れるほどでも

制御不能だった。

 

と思っていた、つい最近までは。

 

生物学を専攻するほどだから

当然ながら生物に興味をもつ次男が

動物やら植物やら、そして虫についても

ああだこうだと蘊蓄を傾けるものだから

 

コワイ虫がいつの間にか

生きとし生ける同胞として

映るようになったのだ。
まだ触れないけれど。

 

そうか、驚くほど短い一生を

虫だって懸命に生きているのだ。

 

そうか、あんなにちっちゃいけれど

生態系を支えるおっきな要員なのだ。

 

あのヒステリック反応も

この同胞意識も

つまりはこちらの受け取り方次第なのだ。

 

自分の『意識』で世界は変わるのだ。

 

***

<往来の難しい時節ではありますが、
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訪ねていらっしゃる方、在欧30年になる私で
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白乃ちえこ
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