あの朝の憶い

えもいわれぬ鉱石を抱く小石は
一体どれだけの年月を永らえてきたことだろう

この艶
この耀き
誰のためでもなく
自然が産み出した芸術である

これを私にもたらしてくれた人と
この生でまみえることは
きっともうない

それでも
小さくも確かな軌跡はこうして残る

たゆたう人の世にあって
人智を超えたこの石は
永遠に踏みとどまる

もしこの石にも記憶が在るのなら
あの朝の憶いを
たずさえていってはもらえないだろうか

 

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白乃ちえこ
白乃ちえこ
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