想いのみのり

反対する父と強行する娘の狭間に立たされた母は
それでも結婚式のためにひとり海を渡ってくれたのだった
普段着でささやかな集いにするつもりだったのが
近しい人たちに参列してもらうと40名近くになり
セールで見かけた白いひざ丈のシンプルなドレスに合う
帽子やショールや靴やらを見繕い
日本や近隣諸国からも駆けつけてくれるみなさんに
感謝を込めておいしい食事を手配し
いつの間にかいっぱしの式になった
同じ一日なのに
もたらす意味の違いによって
濃厚な記憶となって
確かな血肉となって
残ってゆく
人というものは
人の生きる道というものは
想いのみのりだ