巣立ち

あのちっちゃかったやせっぽちが
いつの間にか家族で一番背が高くなり、
いつの間にか自分の進む道を決め、
いつの間にか生家を離れていった。
つい先日まで散らかり放題だった部屋を
きちんと片付けて。
いつの間にか、ではないのに過ぎ去るとそう感じるのは、なぜなんだろう。
野生動物に比べたらとてつもなく長い18年間に
暖かく安らかな巣で
ヒトの子どもはゆっくりたっぷり変貌を遂げて
わくわくはらはらしながら
ようよう巣立つ。
今までの自分を知らない人たちの中で
今までと違う自分として
自分を頼りに生きていく。
これから羽ばたく大空で
たとえ吹き荒れる嵐や極寒の強風に遭っても、
それさえも
大冒険家さながらに
生きているんだ!
と実感していくことだろう。
また、そうあってほしい。
無事に見送った親鳥も
きらきら眩しい朝陽を受けて
やがて古巣を後にする。
これからは
自分の餌だけをついばんで
自分が休みたいときに休めばいい。
さて、明日から何をしようか。
<往来の難しい時節ではありますが、
欧州生活を希望される方やご興味のある方、
訪ねていらっしゃる方、在欧30年になる私で
お役に立てることがあれば、お知らせください>