銀座のカフェで

多くの人で賑わう銀座のカフェで、兄が父の後ろに立っている
頭に血が上っている父が逆上しないよう、牽制するためだ
父が真っ赤な顔で見上げているのは
自分より20センチ近く背が高く真っ白になっているドイツ人
私が結婚したいと紹介するつもりで連れてきた、ずっと年上の相手だ
生来大きな声の持ち主である上に
この話には真っ向から反対する江戸っ子の父が
だまっていられるはずはない
とはいえ人前だという意識が
父にもあったらしいことが救いでもあり
父が言い蹴散らかす日本語が
相手にわからないこともまた助かった
結局父が言いたいことだけ言い放ち
それ以上の騒ぎにならないまま散会
だからと言って意思を変えるでもなく
私は結婚に向けて準備を進めたのだった
今となっては懐かしい あまたある想い出話のひとつである