母なる地球で

ミツバチにとって
スズメバチの偵察ほど恐ろしいものはないらしい
地球上の罪なき生けるものたちを守ることを
ライフワークにしたいと願う
高校生の息子が言った
そんなスパイが
自分たちの巣の周りを旋回していたが最後
是が非でも斃すことを使命として
ミツバチの巣から精鋭部隊が飛び立つ
自分の何倍もあるスズメバチと戦う方法は
ただひとつ
仲間とともにわが身を挺して
スパイに襲いかかり
身体をこすりつけて
摩擦の熱を武器とすることだけだ
そんな愚直な戦法はしかし
そのミツバチの個体の最期を意味する
全うできなければ
これから生まれ来る卵もろとも
育ちゆく幼虫たちもろとも
巣の壊滅につながる
だから精鋭たちは立ちはだかる
そうして 生きとし生けるものの
無数の犠牲と共に
無数の愛と共に
母なる地球で
悠久のときは流れてきた