シロとリード

「Bonjour. Vous ne relâchez pas le chien?」
(おはようございます。ワンちゃんを放してあげないのですか?)

 

朝靄の立つ森を愛犬と散歩していると

アフリカ系のエレガントな女性にすれ違いざま聞かれた。

 

ベルギーの人たちは犬に対してたいそう寛大だ。

人影もまばらな森では

飼い主にリードを握りしめられている犬は

「なんて不憫な」と思われてしまうのだ。

 

「3回も迷子になったことがあるものですから…」と

女性に向かって話しながら

自分に言い訳していることに気づいた。

 

いなくなったらいやだし…

あまり時間もないし…

 

いつだってどんなときも

文句も言わずについてきてくれるシロが

忙しなく匂いを嗅ぎまわっているさまを見やる。

 

そうか、私はシロを信じていなかった。

シロの一番の歓びを制限までして。

 

余裕のある日、

小さな子どもたちがあまり遊んでいない時間帯、

そうだ、リードを外そう。

 

それはきっと

 

自分自身を縛る思い込みを

手放す練習にもなるだろう。


自分自身を信じる練習にもなるだろう。

 

往来の難しい時節ではありますが、
欧州生活を希望される方やご興味のある方、
訪ねていらっしゃる方、在欧30年になる私で
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白乃ちえこ
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