雪だるまとシナジー

ベルギービールが独自の立ち位置を得て愛されるのは
コクのある味わいだけでなく
ユニークさ、カラフルさ、多様な銘柄、高いアルコール度数などなど
いろいろな楽しみ方があるためではないでしょうか。

今回試したのは
アルコール8%でこっくり濃いめで
左党には少々甘口ながら
寒い冬にもしっくり合うものでした。

また、このラベルだけでも
「ベルギー南部ワロン地方(仏語圏)で
国際市場向けに製造された」と察せられます。

というのも、仏語と英語のみの表記で
何やら立派な受賞をしたという英語表示、
一方で三つある公用語の別の二つ
蘭語(人口の3分の2)と独語の併記はありません。
ところが、おそらく法規制があるのでしょう
裏書でようやく公用語が出そろいます。

人口・面積ともに九州より少し小さなこの国、
言語、文化、人種等々、なかなかに複雑な成り立ちです。

ところでベルギーのカフェで
ビールのお供に好まれるのが
ゴーダのようなハードタイプのチーズです。

そして欠かせないのがマスタード。

塩味の効いたチーズのまったりした濃厚な舌触りを
マスタードの辛味と酸味でひきしめて
ビールの苦味が囃し立てます。

あとひとくち、もうひとくち、と
おしゃべりしながら
つまんでは飲んでと繰り返しているうちに
心身が寛いでくるのですから
いちにちの仕事後のアペリティフにはもってこいです。

こんなふうに
それぞれの持ち味が
それぞれに作用し合って
最強の組み合わせになると
もともとの力の何倍にもなり、

ころころ転がしているうちに
膨れていく雪だるまのように
自分が、相手が、
お互いの刺激や励みにもなるような、

そんな世界にいられたら、

こごえる雪の日だって雪合戦で楽しくなり、
どんな人との関わりだって実りがあり、
やがて争いごとだって減ってゆくのだろうな。

そんなことを考えて
雪上に残された鳥たちの宴の後を眺めながら
ビールを愉しむのもまた一興です。

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白乃ちえこ
白乃ちえこ