何も足さず何も引かず

私たちが住む西欧の国は
樺太あたりの高緯度にあります。

北半球のそんな地域では冬になると
まるで気乗りのしないかの太陽が
いち日のうちほんの数時間だけ
低い位置から気まぐれに顔をのぞかせ
その間だけは影がえんえんと伸びます。

頭上から焦がす夏の炎天とは異なり
たとえ北風の冷たい日でも
仄かな煌めきを全身にくまなく
浴びせてくれるのです。

 

悠久の伝統をもつ東洋の陰陽思想では
冬至のころに陰の極みを迎え
過ぎるとまた陽に向かうと捉えます。

寒さが、暗さが、身に染みるときでも
お天道さまもお月さまも万物を見守り
それを受けて生きとし生けるものは根を張ります。

他でもない自分自身に
エネルギーが向かう貴重な季節。

そうして春になるまで
外に向けた力を蓄えます。

ただただ大自然のうつろいの一部であり続けられるなら
何も足さず何も引かなくて良い
ということなのでしょう。

<陰陽と食材と自分の身体>

学んでいる望診(*1)で欠かせない「陰陽説」、
古代中国で生まれ長い長い年月を
綿綿と受け継がれてきた考え方です。

自然界のすべては、「陰」と「陽」という
相反する氣(エネルギー)の
盛衰によって生じると考えます。

これは、善悪のように対立する二元説とは異なり、
「同時に補い合うもの」です。

単独では存在できず、いずれかが盛んになると
もう一方が衰え、
それが極まると逆になる、という
つまりは「バランス」がものを言う概念です。

食材にも陰陽があり(*2)どちらかに偏り過ぎると
体調を崩すことにつながります。

とはいえ、全てを把握するのは難しいもの。
そこで目安になるのが「旬の食材」です。
一般的に季節のものを頂くのが
身体にとって良い作用をするというのは
まさに自然の力です。

今日ではトマトやナスのような夏の食材も
冬でも入手できますが
これらは夏に必要な身体を冷やす作用が
あるため
冬に召し上がるときは
生でなく加熱されるとより
良いようです。

どんな場合でも
自分の心身が自分にとっての正解を知り
その上サインを出して報せてもくれている。

それを知ると
自分のためだけに黙々と働いてくれている

臓器や器官や心、顕在・潜在意識、
何かと問題提起してくる皮膚でさえ
愛しくなります。

(*1) シミやシワ、できものなどなど、体表に見られるサインで
身体の内部の不調を読み解く東洋医学の一種
(*2) 検索されると参考になる表がご覧になれます

 

投稿者プロフィール

白乃ちえこ
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