海と空

復活祭の休みに久しぶりに会った彼女は
すっかり痩せ細っていた

それでもきらきらと眼に力を湛え
お寿司をおいしそうに頬張って
家族のこと
仕事のこと
懐かしい昔のこと
結ばれ得ない人のこと

店の窓から見える
はらはらと散る桜の花びらが
地面にたどりつく前には
次の話題に移るほど
いろいろな話をしてくれた

最期の話をしてくれた

あの晩私が泊まったホテルの部屋からは
ぽつぽつと散歩する人々の影が
長く伸びる砂浜が見渡せ
ミルクを溶いたような灰色の海と空が
遥か遠くで混じりあっていた

彼女があれからほどなくして辿った場所

生きとし生けるもの全てがやがて辿る場所で

混じりあっていた

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白乃ちえこ
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