生命のかけら

私たちが住む家は森に面していて
愛犬との散歩が愉しい日課だ
春に見かける水鳥のヒナといったら
ふわふわの毛糸玉たちが
水面をころころ転がるようで
それはそれは可愛らしい
ある日愛犬が近づくと
親鳥たちは毛糸玉を挟んで
羽を広げ声を荒げて牽制する
もし襲われたって
37キロの大型犬には太刀打ちできない
それでもヒナを護ろうとする
その姿は圧倒的だ
時間とはエネルギー、
限りある生命のかけら
親鳥にとってヒナを護り育むことが
自分たちの「生命のかけら」だ
日々の時間
つまりはエネルギー
つまりは生命のかけらを
全てに尽くすことはできないから
自分にとっての
「護りたいヒナ」に集中するほかはない
ちょっと早起きしてヒナに生命を注ぐ
それ以外は省エネで取り組む
やがて大きくなったヒナを妄想の中で愛でる
こんなふうに
ヒナが育っていくのを見守ればいい
<往来の難しい時節ではありますが、
欧州生活を希望される方やご興味のある方、
訪ねていらっしゃる方、在欧30年になる私で
お役に立てることがあれば、お知らせください>