ともしび

これから弱まるからこそ
渾身の力がこめられたかの日差しに包まれて
森の樹々は紅に黄に輝く
紺青の海にミルクを溶いたような空が
その向こうに遠大に広がっている
そんな秋がまた訪れて
慎ましくも壮大だった
あの日を想う
天窓からの光で黄金色に照らされた棺を
遥かに眺めて飛んで行ったあの鳥は
旅立つ彼女だったのではなかろうか
その彼女が遺してくれた
今生への励ましの言葉は
私自身のこれからを見守ってくれる
暖かいともしびだ
彼女のやるかたない念いを悼みながら
少しずつでも私は歩みを進めてゆこう