目的地

陰陽が等分になる秋分の朝、

もう息が白くなるほど肌寒い。

 

地球の寸分違わぬリズムに

身を委ねられることは

実に心地がよい。

 

するとふと

ある年の初秋をめぐる追憶に引きずられ

長く伸びた影が小さく佇んでいる。

 

樹々の根本や芝生、

そろそろ黄金色に輝き始める落ち葉を

生き生きと嗅ぎ回る愛犬に引っ張られて

我に帰る。

 

またやっちゃった…

 

過ぎたことに向き合いすぎて何になるだろう。

かつての思いを再生する必要はないし、

解像度を高くするのは『この時』と『この先』だけでいい。

 

できるかどうかはもはや問題ではなく

自分が望むゆく末に目を向ければ良いのだ。

 

私はどうありたい?

 

それだけでいい。

それがいい。

 

傷が癒されたから、

自信がもてるから、

何かを修めたから、

だから進める、のではなく

 

今の幸せや安心をありがたく享受するから、

未来とこの自分を晴れ晴れと見渡すから、

 

だから

過去もいままでの自分も

いつの間にか解き放たれて、

 

宇宙の流れが軽やかに

その先へと運んでくれるはずなのだ。

 

そう、潜在意識という

タクシードライバーに

目的地を伝えて

車窓の眺めを愉しんでゆけばいい。

 

朝陽に照らされた影が

愛犬とともにまた歩み始める。

 

往来の難しい時節ではありますが、
欧州生活を希望される方やご興味のある方、
訪ねていらっしゃる方、在欧30年になる私で
お役に立てることがあれば、お知らせください>

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白乃ちえこ
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