ペンペン草とおしろい花

そこここに
昭和の佇まいを残す都営荒川線のほど近くに
高齢の両親は移り住んだ
何十年も住み慣れた家屋を手放し
近所にできたマンションでの暮らしだ
小学校や公園、商業施設に隣接しているからか
若い家庭が多いのだと
母は遠慮がちに
でも心細そうにつぶやいた
兄姉や長年の知人
学生時代からの気心知れた友人を
ひとりまたひとり見送るというのは
いったいどんな心持ちだろう
自分が子どものころにあった
あの角のタバコ屋も
通学路の文房具屋も
路地の駄菓子屋も
ビルに建て替えられてゆくさまでさえ
心の奥に疼く切なさを
もてあますというのに
線路脇にたくましく育つ
ペンペン草やおしろい花が
年々小さくなってゆく両親の
ゆっくり歩む
その長く伸びる影を
見守っている