昭和の佇まい

両親と出かけました。
山手線に乗るやいなや、
優先席にいた若い男性が
無言で父に席を譲ってくれました。
数駅先で男性が降車する際、
父はお礼を述べたのですが
男性はイヤホン着用で聞こえなかったのか
目もくれずに立ち去りました。
そのとき父はなんとも寂しそうな表情を浮かべたのです。
何かを聴きながら電車に乗るという発想のない父には
無視されたと感じられたのでしょう。
両親が長年住みなれた家を手放して
移り住んだマンションの周りには
昭和の佇まいを色濃く残す界隈があります。
人の温度を感じるたばこ屋
昔ながらの銭湯
伝統の味を守る豆腐屋
昭和といえば、両親にとっては
人生で勢いのあった日々を過ごした
懐かしい時代。
「懐かしい」と思う心には、
その時代を過ごした輝かしい自分が
よみがえるのではないでしょうか。
遠く去りゆく昭和時代を生きぬいた両親には
そんな「懐かしい」をお茶うけにして
長く元気でいてほしいと願うばかりです。